2018年3月24日土曜日

Philips DAC7 (TDA1547) DACキット改造

eBayで流通しているTDA1547搭載のDACキット基板を自分なりにリファインしてみたのでブログに残してみようと思う.
とはいえ私は電子回路のことを詳しく理解していないので手法については初級者レベル.オーディオ好きの手遊び記事と断言しておきます.

まえおき

 若かりしころ愛用していたCDプレイヤーはPhilipsのLHH600Bで,TDA1547(DAC7)をダブルディファレンシャルで使ったモデル.現代的なHiFiとは違ってナローレンジで低域に独特の押し出しがあり,柔らかくてふくよかだけれどもどこか芯がある,そんな感想を私は持っている.
ザ・ビートルズなんか聴くと,ポールのベースは楽しそうに唄い,リンゴのドラムはスタジオの奥でスティックを振り楽器を鳴らしているように感じられ…といったら言い過ぎかもしれないがそういう箱庭のような面白みが感じられ魅力的に思えた.
 そんな愛機もリッピング音源全盛になった昨今では出番がなくなり,DACモジュールだけ独立して動かせないか?などと考えてはみたのだが回路技術がないのであきらめ,整備して他の方にお譲りしてしまった.
 しかし時々LHHの音が懐かしく思われ,ついついTDA1547のDACボードを入手してしまったわけです.DACチップだけで音が決まる訳じゃないとは知りつつ.

そのDAC7基板で組んでみたDACの姿.



入力はCOAXのみ使用.仕様上48kHz/24bitまでだがリッピング音源を聴くには充分だ.
電源トランスはデジタルとアナログを別にして筐体に入るぎりぎりの80VAを奮発.



DAC基板はアナログ変換以降の音声信号経路には抵抗をVishayのVAR,コンデンサをスチコンに換装と,やぶれかぶれの大奮発.
最終のDC阻止カップリングコンは悩んだ末にVishayのチップタンタルコンを選定.
I/V変換とLPFを担当するオペアンプはデフォルトの5532から色々試聴したあげくNJM4558という最も渋い選択となった.OPA627やTLE2072やMUSES01とかも試してはみたが4558の音が一番それっぽかったから.
(ちなみにLHH600Bではシグネティックス製の5534が使われていた)




このDACキット基板は基本的にはデータシートにある回路構成をなぞっているように見えて実は実装されてないパスコンがあったりする.(それも大事な部分の)
そこで基板の半田面にフィルムコン(PPS)追加実装したのが下の写真.
オペアンプとDACのアナログ電源供給には本来あるべき0.1uFを実装.
各電源レギュレータの入力側にも念のため0.1uF.
整流ダイオードには0.01uFをパラに入れてスイッチングノイズ低減(のつもり).
整流ダイオードに0.01uFというのはLHH600Bで使われていた技のものまねだ.


なお電源回路では,TDA1547への-5V供給がオペアンプ用電源の-15Vラインから減圧しているので,そこのレギュレータだけものすごく熱くなるという罠.やっつけ仕事かよ!
そのため実際の運用ではアルミの放熱フィンをかませて放熱を補っている.それが下の写真.黒いのはシールドケースではなくて,放熱器なのです.


こうして配線パターンを追いかけながらいじってみると,あまり良い引き回しの基板ではないのが素人目にも分かるのだが,なにしろDAC7に妄信的であるから忘却!

筐体は市販品のDACのものを流用.(ランプ・スイッチは何も機能していない)
サイズ感もデザインも,とてもいい筐体だと思う.
(元の中身はどうしたかというと,手遊びが過ぎてお陀仏にしてしまった)


肝心の音だが,目指していたLHH600Bの雰囲気は出せていない.
というかチューニングの途中から本来の目標を忘れて気持ちいい音の追求になってしまっていた.笑
音楽を聴いていて心地いいかどうかでしか判断できないので.耳良くないし.
おそらく透明度や音の密度ではLHHを超えていると思う.いいパーツ使ったから当たり前か.

ちなみにデジタルソースは,MacのAudirvana Plus 2.6.8を使い,CDリッピングした音源を24bitにアップしてUSB-DDC経由でCoaxに送っているから,この部分だけでもアドバンテージはありありだ.(ではDACの実力はどうなのだ)

というわけで今回の記事は趣味の工作は楽しいという結論につきる.
今後もおそらくチューニングは続くと思う.そうやって遊べるのがキットの良いところだから.

2017年3月11日土曜日

スピーカー製作 - DIATONE P-610B

サブシステム用スピーカーを仕立ててみた.

ヤフオクで落札したジャンク品のP-610B.エッジのウレタンスポンジが加水分解で崩れてはいたがボイスコイルもダンパーも問題なし.まずはエッジ張り替えに挑戦.
ちょうど梱包用の3mm厚ウレタンシートがあったのでドーナツ状に切り抜いて利用.
純正より厚みがあるのでガスケットは不要だろうと思い,あえて付けていない.
古いエッジの除去方法や新しいエッジの貼り付け方法はネット上の情報が大いに役立った.先輩方に感謝.


エンクロージャは古いジャンク品をヤフオクで落札した.材質や設計はさておき,どうですかこのくたびれ具合.昭和レトロ同士で良い感じになりそう.
内容積およそ100リットルのバスレフ箱だがユニットはなく,直径225mmの穴が開いているのみ.メーカー品ではなさそうだがオーダー製作品だろうか.


大きな取付穴径にP-610がマッチするよう,サブバッフル板の工作をした.
型紙を貼り付けてジグソウで円くカットしたのだが難しい.2回ほど失敗してようやく形になるようなものができた.サランネットに隠れてしまうので多少のずれはよしとする.
使用したのは18mm厚ラワン合板.落とし込み構造とするため2枚貼り合わせたユニットマウント部分は36mm厚となるため,音響への干渉云々で45度にカットしてみた.


エンクロージャにサブバッフルを取り付け,ユニットとターミナルを結線して完成.



三十年ぶりに聴くP-610の音はというと...
うん.ふつうだ.ふつうに聴ける.これといった感動はない.
まあ期待しすぎだな.笑

オーディオ的に構えて聴くスピーカーではない.聴きどころがあるわけでもない.
ただ音は優しいし雰囲気はある.小音量で鳴らしっぱなしにして邪魔にならないような使い途が合っているのだろうと思う.


上の写真のように45度くらいに振ってみたら独特の音場感になった.
エッジ張り替えたばかりだし,まだまだ鳴らし込みが必要なのだろう.

しばらく職場のBGM用として使おうと思う.

2017年3月5日日曜日

オーディオアンプ修理 - counterpoint SA-3

オー友(オーディオ友達)から「アンプ修理できそうだよね」と声をかけられ真空管アンプ渡されたのだが(なぜそう思ったのか謎),無事に治ったのでブログに上げときます.何かの参考になるかもしれないので.

[故障状況]
電源を入れて間も無く,発振しているようなギャーという雑音が出る.雑音の大きさはボリューム位置と関連がない.アンプとしての機能はかろうじて片Chから音声が出る程度.

[原因特定]
ボリュームと関係のない発振音なので増幅段より前でおそらく電源回路と推測した.
筐体を開け3端子レギュレータIC(LM317)を発見.入力と出力の電圧を測定するも出力なし.死んでる.
シリコングリスの劣化具合から,放熱が追いつかなくて熱破壊したのだと思う.


↑ビニル電線の絶縁被覆も簡単に裂けてしまった

(...修理後に測定したらLM317の入力16Vくらいレギュレート出力6.3V.放熱は薄いシャーシのアルミ単板,それがやっと触れるぐらい温度上昇する.ちょっと無理がある設計なのかなと思った)

(...基板の電解コンから離れた位置に電線を引いてマウントしてあるので,発振防止のパスコン入れるのがセオリーらしいが対策はされていないようだ)

電解コンデンサも全て外して容量測定した.やはり容量抜け.(これは仕方ないね)

[修理]
レギュレータLM317の交換.その際に絶縁シートがシリコーンシートだったので念のため薄いテフロンシートに換えた.(熱抵抗は比較的小さいかなと思い)



 レギュレータの入力と出力に面実装のPPSフィルムコンデンサ0.1uFをパスコンとして挿入.
効果のほどは知らん.おまじないです.


 電解コンは銅箔巻きシールドして全て交換.効果のほどは知らん.おまじないです.


[試聴]
いかにもキャラクターを持ってそうという予想に反し,ストレートで色付けを感じず古い音源も現代の録音も違和感なく聞ける.ソースの良さをそのまま伝えてくれてる感じがする.こういうの好きかも.
ソース機器としては自作のD/Aコンバーターを使った.DACチップにTDA1547を使ったeBayなんかで流通してるKITをベースに,アナログサウンドを目標にチューニングを重ねているもの.

ソース:PCオーディオ (Macbook/Audirvana→USB-DDC→自作TDA1547DAC)
プリ:counterpoint SA-3
パワー:LINN C2200 x 2 (BiAmp駆動)
スピーカー:LINN AKURATE 242

LINNのフルシステムは繊細というか情報量が多いけれどスレンダーな感じがするが,counterpointのプリをかますと大らかでちょい骨太になる.これは聴いていて楽しい.

しばしの音楽鑑賞ののち,修理品は無事にオーナーの元に引き取られていった.

2015年8月12日水曜日

刈払機FR-130T修理

今年の茶摘みが終わった頃,FR-130Tにヘッジトリマーのツールを付けて茶の木を剪定していたら突然パタリとエンジンが止まってしまった.販売店さんに持ち込んだら意外なところが壊れていた.4サイクル刈払機を分解した写真も珍らしいと思うので記事にしてみる.

バルブを動かすカム部を分解したところ.

カム部にあるプレス部品の一部が剪断していた.
左側に丸まった金属片が写っているが,これがシリンダーの中に入っていた.
4-Mixエンジンの仕組みから推察すると,オイル潤滑のルートでクランク室→シリンダヘッド→吸気バルブ→シリンダへと入り込んだのかも知れない.

シャフト受けが削れて真円ではなくなっている.

4-Mixエンジンのシリンダヘッド.
(ここは壊れていない)

シリンダ内に多量のカーボン.
エンジンオイルには気を遣っていたつもりだが(?)

販売店さんでは手に負えないということでスチール社に送って対応をして戴いた.ふつう壊れるような箇所ではないと思ったので,それなりの期間はかかると予想していたが,販売店さんが代替機を出してくれたのでなんとかしのぐことができた.
そしてようやく彼は戻って来た.


エンジンの冷却フィンに加工がされている.
フィンには数字のレーザー刻印がされている.

スパークプラグのマウント部がほんの少し削られているようだ.
プラグがシリンダ内部に少し突き出したことになる.

修理報告書によるとカム機構に何らかの対策がされたようだ.現行販売機では既に対策済みらしい.その問題とは別に,プラグのマウントが加工されているのは今回2箇所の対策を行ったと考えられる.
推察だが,プラグマウント部の加工はカーボン付着との関連があるのかもしれない.

今回はスチールさんのご配慮で無償対応して戴いた.そういう類の故障だと思っていたし,対策も為されているようなので修理期間はかかったが結果的には満足している.

帰ってきたFR-130Tで自宅周りの草刈りをしたが,やっぱりこの機械はいい.
堅い株立ちの草にも回転が落ちることはなくストレスを感じないし,機械重量は10kg超と数字のうえでは重いが,フレーム(背負子)がしっかりしているので荷重が分散されて体感上の重量はさほど感じない.4-Mixエンジンの排気は刺激臭が少なく穏やかだ.
 FR-130Tの良さは修理期間中の代替機と比較して再認識したことだった.その代替機は軽量型の背負い式だったが,腰まわりだけの一般的なフレーム構造では体感上の軽さを感じないどころかむしろ肩に荷重が集中してつらかった.そして手に伝わる振動が意外に大きいことが疲れを増長させ,2サイクル特有の排気臭は作業のモチベーションを削いだ.刈刃が草の株にあたると急激に回転が落ち作業が捗らなかった.
 比べるほうが酷だが,仕事量と疲れの比率がまったく違う.

そしてなんといってもFR-130TではKOMBIツールが使える.チップソー,ナイロンコード,ブロワを替えながら作業を続けられるのはほんとうに便利.
唯一の欠点はトリガースロットルの操作性と思うが,もう慣れてきて,さして重大なことではなくなってしまった.

(2015/8/20 一部加筆修正)

2013年7月3日水曜日

刈払機 (その3)



以前の関連記事:刈払機, 刈払機(その2)
- - - - -

しばらく更新してませんでしたが,刈払機FR-130Tは便利に使っています.エンジンも一発で掛かるし順調.


ブログ更新していないうちにコンビツールだけ増えたw
背負ったままで簡単に取り替えできるので,障害物のあるところだとチップソー→ナイロンコード→ブロワーとか,植木の刈り込みではトリマー→ブロワーとか,複数ツール切り替えで捗ります.

(各ツールについてのレビューもそのうち書く予定だが,きょうはここで終わり)






2013年5月15日水曜日

刈払機 (その2)

以前の関連記事:刈払機
- - - - -

STIHL FR130Tを圃場などで使ってみて気になった点を挙げてみます.
工夫が可能な箇所については標準仕様から変更してみました.(後述)


  • トリガー型スロットル(1)
    低速領域で速度を保つのがとても難しい.
    慣れれば大丈夫だろうとタカをくくっていたが…すいません無理っすw
    →改造しました
  • ループハンドル位置(2)
    説明書ではスロットルから20cm先にループハンドルを取り付けるとされているが,この位置だと刈刃を左右に振るのは大変.シャフト全長とループハンドル位置の比率から見ても力学的に無理っしょw
    →位置変更しました
  • デフレクター(3)
    刈った草がデフレクター取付部と刈刃の間に挟まって頻繁に取り除かなければならず,仕事にならない.

    矢印部分のクリアランスが狭すぎるのと,引っかかると取れにくい形状なのが原因と推測する.
    →交換しました
  • 機械重量(4)
    総重量が10kgを超える.長時間の作業はきつい.短時間なら問題ない.
    (パワー重視で選んだので承知のうえ)
    →休憩をとるなど運用面でカバーできる
  • アイドリング回転数(5)
    慣らし運転のころ気温が低かったときはアイドリングで止まってしまうことがあり,少し回転数調整で上げていたが,いまぐらいの気温ならば定格2,800rpmに戻しても問題ないようだ.
上記の(1)(2)(3)については自分で出来る範囲で変更を施しました.


  • トリガー型スロットル(1)
    指の関節全てがフリーな状態で力仕事しているわけだからスロットルを一定位置に保つのは無理な話.
    そこで厚さ8mmほどのゴム板をゴム用接着剤で取りつけた.

    標準状態
    ゴム板取り付け後

    ゴム板の端面を支点にして指の第一関節より先をテコのように使ってスロットルを動かす方法とした.

    アイドリング
    低速
    (低速:別方向から見たとき)
    フルスロットル
  • ループハンドル位置(2)
    より先端(コンビツールのシャフト側)へと移動した.
    野球でいうバントのように短く持つ格好となり,土手などの傾斜地を刈るときに楽.平地では腰を落とす姿勢になるため機械重量が重く感じるが,刈刃のコントロールはしやすい.
    なおコンビツールごとにループハンドルを購入して取り付けることになる.(ツールを取り扱う上ではそのほうが便利だと思う)
    ちなみにブロワーにはループハンドルを付ける余白がないためハンドル無しとなるが,作業上は全く問題なかった.
  • デフレクター(3)
    デフレクター無しで作業したいくらいだがさすがに背負い式では危険そうなので,標準のデフレクターを取り外し,ほかの草刈機のパーツを取りつけた.シャフトに直接取り付けるタイプでクリアランスは充分取れる.

これらの変更でかなり自分に馴染んできました.


2013年4月28日日曜日

草取り鎌

そろそろ草たちに勢いが出始めてきました.
石垣などの狭い間に生えてきた草や,根っこが丈夫ですぐに地上部が回復する草など,草刈りではなく草取り作業が必要になることもしばしばあります.

いま使っているのは,岩手県大船渡市の熊谷鉄工所で作っている草取りカギカマという商品.
鎌をタテにして根の周りの土をピンポイントで掘るのに適していて,タンポポやスイバなど深く張る根を除去するのに重宝しています.
鎌をヨコに使って地表面を削りとったりにも使えます.
軽くて持ち易く,手の力が無駄なく地面に伝わってる感じがする.
商品化までに結構工夫を重ねたんだろうなと思わせる道具です.
おすすめです.